誰しも最初は初心者です。
チート野郎を目指して頑張っていきましょう。
記念すべき第1回目のお題は「カレー」です。
もっと大事な知識があったのかも知れませんが、私の優秀な脳みそで高度なシュミレーションをした結果…なんと10回に9回、カレーが無かったことが原因で没落貴族になってしまったので仕方がありません。
※残りの1回は清潔な水が確保できなかったことが原因でした。
美味しいカレーを作るため、必要なのはもちろん食材です。
異世界とはいえ人間が暮らす世界ですから、肉や野菜くらいはあるでしょう。
人間が存在する=ある程度似通った植生であろうというなんの根拠もない推測の下、「異世界の元ネタとして有名な中世ヨーロッパで手に入るか」を基準に考えていきます。
◇
というわけで食材を探すために図書館にやってきました。ここには、この世の全てが揃っていますからね。初期値で25の図書館技能を使いこなしましょう。
まずはカレーに限らず、あらゆる料理に使える重要食材の「タマネギやニンニク等」…「アリウム属」です。
タマネギは中央アジアの山々、ニンニクはキルギスの辺りが原産地だとされているようですね。
そんなアリウム属。イスラム神話では、悪魔がエデンの園から追い出された時に右足が触れた地面からタマネギが、左足が触れた地面からニンニクが生えてきたと言われています。
………なんと便利な悪魔でしょうか。
異世界と言わず、是非、仲間にしたいです。
仲良くなって一緒にダンレボやってゲームセンターを出禁になりましょう。
さて、そんなアリウム属ですが、なんと最古の文明…古代メソポタミア文明の頃には使われていたという記録があるとのこと。
紀元前1600年頃の楔形文字で書かれた、「エール・バビロニアン・タブレット」という、3枚の粘土板に古代メソポタミアの約40のレシピが記録されているようです。
………。
かっこよかったので3回唱えました。皆さんもやってください。苦情が来たら諦めてください。
なんと!そのエール・バビロニアン・タブレットに、タマネギとニンニクが頻出するそうなのです。凄いな君たち。
中世ヨーロッパで手に入るか心配していた食材が、もう紀元前1600年頃の古代メソポタミアで人々の食卓(?)を支えているとは…。
人類はもっと彼らに感謝するべきですね。
やがて、アリウム属はローマ人によって北ヨーロッパに広められたようです。
今日でも見かけるスープに入れて良し、料理に加えて良しの多用途性は中世ヨーロッパでも愛されていました。
オーブンの無い庶民のお宅では、皮付きのタマネギを暖炉の熱い灰で焼いて食べていたとか…。普通にめっちゃうまそう。いつかやる。絶対やる。
中世ヨーロッパの食事といったら、硬いパンとくず野菜のスープ…みたいなイメージがありましたが。ご馳走のような楽しみ方もしていたんですね。
やっぱり、いつの世でも食は大事です。
というわけで、結論。
中世ヨーロッパで「タマネギとニンニク」は農民や庶民にも
日常的に食べられていた食材ということでした。
日頃の感謝を込めながら鍋に入れましょう。
カレー作りで最初に炒めるといえば。で、お馴染みの重要食材。タマネギとニンニクが庶民でも手に入るとは…正直、驚きでした。
これは嬉しい誤算です。
わざわざ探さずとも簡単に手に入るでしょう。案外、カレーというのは簡単に作れてしまうのでしょうか。
我、貴族の次男ぞ?
………いやいや、ここで気を抜いてはいけません。
お次は、ニンジンとジャガイモです。やっぱり日本人的にはカレーに欠かさず入れたいですからね。危ないところでした、油断は禁物です。
ということで、次回はニンジンを探して行こうと思います(図書館で)。
◆余談◆
今回、参考にした「タマネギとニンニクの歴史」という本で9種類のアリウム属が紹介されていました。
- Allium cape(アリウム・ケーパ)
タマネギ 言わずと知れた名脇役。メチレンブルーで細胞核を染色したね。
- Allium sativum(アリウム・サティバム)
ニンニク 美味しいのに匂いで嫌われる。
- Allium nigrum(アリウム・ニグラム)
クロニンニク 青森県で有名なニンニクを自己発酵させた食品では無い方。
- Allium schoenoprasum(アリウム・スコエノプラスム)
チャイブ アサツキっぽい見た目。チポリーナっていうと分かる人もいるかな。
- Allium tuberosum(アリウム・ツベローサム)
ニラ 匂いが強め。花も食べられるんだって。知らなかった。
- Allium ampeloprasum(アリウム・アンペロプラスム)
リーキ 見た目は太いネギ。食べたことはある。
- Allium fistulosum(アリウム・フィスツロスム)
ネギ ネギ。振るな。
- Allium oschaninii(アリウム・オスカニニー)
グレー・エシャロット フランスのやつ。エシャロットと区別して呼ばれるらしい。
- Allium chinense(アリウム・チャイネンス)
ラッキョウ チャイニーズかと思ったらチャイネンス。
以上の9種類なんですが、皆様………とんでもない事実にお気付きでしょうか。
………そうです。
学名がクソかっこいい!!!!!!
この野菜達の学名、我々の「ホモ・サピエンス・サピエンス」に比べてメチャクチャ格好良くないですか?
「アリウム・サティバム」ですよ!?
これ完全にアレですよね。アリウム家ですよね。
女泣かせの「ケーパ・アリウム」
吸血鬼ハンター「サティバム・アリウム」
サティバムの影武者「ニグラム・アリウム」
世界を旅する「スコエノ・プラスム・アリウム」
スコエノの弟でサティバムに憧れる「ツベローサム・アリウム」
武器は大剣「アンペロ・プラスム・アリウム」
武器は太刀「フィスツロスム・アリウム」
僕はケーパとは違う「オスカニニー・アリウム」
よく考えたらカレーのお供じゃん「チャイネンス・アリウム」
ですよね!?
私がカレーの知識を得て、転生した暁にはアリウム家との出会いもあることでしょう。
ケーパやサティバム達との冒険が待ち遠しいです。
それでは皆さま、良い異世界ライフをお過ごしください。
〜参考文献〜
- Jay,Martha.(2016)Onions and Garlic:Reaktion Books.(=2017,服部千佳子 訳『タマネギとニンニクの歴史』株式会社原書房)