深海カボチャ〜まだまだ沈む〜。ちなみにカボチャは水に浮く〜(本当)。
・・・。はい。
- ●どうやったら水の中で戦うことができるか考えよう
- ①エラ呼吸に変身する(どうしてヒトは水の中で息ができないの?)
- ②空気を持って行く(ヒトが水中で活動するにはどのくらいの量の空気が必要?)
- ③空気を作り出す(水の電気分解)
- ④水から酸素を取り出す(①と③を読んでください)
- ⑤気合いで素潜り(どうして息を止めることができないの?)
- ●まとめ
カボチャは水に浮く筈なのですが・・・、何を隠そうカスティーは泳ぐのがヘッタクソです。25m泳ぎ切る自信はあまりありません。浮き輪をください。陸で生きていく。
さて。そんな、泳ぐことができない人間にとって・・・異世界(ファンタジー世界)でなによりも恐ろしいもの。それが・・・。
水中戦です。
水中に暮らす生き物を食べるためか・・・。それとも守るためか。異世界に転生した以上、水の中で暮らすのに特化した生き物と相手の土俵で戦わなければいけない時もあるかもしれません。
あっはっはっは!むりむり〜!
人間は、そういう風にはできていないんです。陸上ですら他の生き物に勝てるか怪しいのに、アウェーの水中で勝てるだろうか?いや無い。いわんや水中をや。助けてください。
しかし、そこは異世界・・・ファンタジーです。現世の知識を元にすれば、アウェーな水中をホームにする方法があるかもしれません。きっと。たぶん。もしかしたら。
今回は、カナヅチのカボチャが水中で戦う方法を考えてみましょう。
●どうやったら水の中で戦うことができるか考えよう
さて、水中での活動ですが・・・。ファンタジーの世界にはどのような手段が登場しているのでしょうか。
思いつく限りの、不思議な世界をピックアップしてみました。
例1:某魔法学校の生徒H君
学校対抗!魔法競技大会編!にて、水中に囚われた友達を助け出す試練を課された際・・・。多くの参加者が魔法で頭に空気を纏わせる中、H君は謎の物体(盗品)を食べてエラ呼吸の姿に変身。水中を思いのままに泳いでいました。
時間が切れるとやばい。
例2:謎の潜水艦ノーチラス号のN船長
潜水艦から外に出る際には、片方の肩で新鮮な空気を作り、もう一方の肩では空気を綺麗にする・・・という画期的な機能がついた潜水服を使っていた。
「かたほうのかた」って声に出すと分かりにくい。
例3:未来から来た青いロボット(猫とは認めないし、断じて狸では無い)
水中を探検するためにロボットが出す便利な道具。その中でも飴と鼻栓。どちらも、水中の酸素を取り出して空気中と同じように息ができるようにするという優れもの。カスティーと同じく泳ぐのが苦手なN君でも、水中を楽々移動していた。
どんな環境でも平気になる光線銃は、意味がわからなすぎるので除外。
例4:名前に「ジョ」が2回入る一族の大冒険
潜水艦から脱出だぁ!酸素ボンベを背負うぞぉ!何ィ!敵が酸素のなんか咥えるとこに変身してるぞ!よっしゃ酸素ボンベ捨てて泳ごう!
そうはならんやろ。
なるほど…。簡単にまとめると…
①エラ呼吸に変身する
②空気を持っていく
③空気を作り出す
④水から酸素を取り出す
⑤気合いで素潜り
思ったよりもバリエーションが豊かですね。
最高です。
・・・。
想定外に、様々な手段の「水中活動」が集まったので・・・この中から、使えそうな方法を選んでいく方向にシフトしましょう。
研究に必要なのはライブ感です。欲しいデータなんてどうせ出ない。出なくて良い時に出る。
①エラ呼吸に変身する(どうしてヒトは水の中で息ができないの?)
水の中で暮らす魚はどのように呼吸をしているか。その答えは「エラ呼吸」です。魚は口から吸い込んだ水をエラから出します。その時に酸素を取り込んでいるんです。
ならば、そのエラさえ体に作ってしまえば・・・水の中でも自由に活動できるのではないでしょうか!
首の横っちょに数本の隙間を作って・・・、
あら、良い感じです。エラも似合うとは、やはり素材が良いとなんでも似合いますね〜。
・・・。
この姿で素材が良いっていうと、お料理方面に意味が偏りそうです。
しかし、よく知らないのですが・・・エラってただの隙間じゃ無いですよね?中には何を作れば良いんでしょうか。その辺りも知らなければ変身のしようがありません。
「肺」と「エラ」の違いってなんなのでしょう。
それぞれ、酸素を取り込む方法にはどんな違いがあるのか調べてみます。え〜っと・・・、何々?肺とエラは・・・。なるほどなるほど。
形状が違うみたいですね!
・・・。
え?それだけ???
いやいやいや、えっ、エラって・・・水から酸素を取り込むことができるミラクル器官じゃ無いんですか?あっ、肺も水に溶けた酸素を取り込むこと自体は可能・・・と。そうなんですか・・・、へぇ・・・。
・・・じゃあ、なんで私は溺れるんですか!?
なんだか納得いきません。
そもそも。なんでヒトは水中で呼吸ができないのでしょうか。
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〜解説(読み飛ばしても良いよ)〜
エラも肺も、血液に酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する「ガス交換」を行なっています。そのガス交換の仕組みは同じで、気体が濃度の高い方から低い方へと向かう・・・「拡散」によるものです。違うのは、そのガス交換をする場所まで気体をどのように運んで来る(または運んで行く)かという部分です。
ヒト等の主な哺乳類の肺は、気道を通って空気を出し入れしています。出口と入口が同じです。出し入れする空気が混ざることもあって、実は他の生き物と比べると酸素を取り込む効率が悪いです。それでも、空気の21%が酸素なので困りません。0℃、1気圧で1Lに300mgくらいの酸素があります。
水中は空気中に比べて酸素の量が少なくなります。5℃、1気圧で1Lの水には、酸素は最大で12mgくらいまでしか溶けることができません。仮に水中に酸素が十分に溶け込むことができるのであれば、理屈の上では水中で肺呼吸ができます(実際は構造とかの理由で難しいでしょうが・・・。)
詳しくは「液体呼吸」で調べてください。
〜解説終わり〜
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簡単に答えを言ってしまうと「水中に溶けることができる酸素の量が、空気中に含まれる酸素の量に比べて圧倒的に少ない」ことが、ヒトが水中で呼吸することができない大きな理由です。
つまり・・・。
「エラ呼吸に変身する」ということは、
・水中の酸素を効率よく集める器官を作る
・体全体で消費する酸素の量を減らす
ということになるでしょうか。考えてみれば、エラ呼吸する生き物ってどれも代謝が低いですね・・・。
かなり大掛かりな変身が必要そうです。エラの隙間空けるだけとか、舐めたことを言ってすみませんでした。
・・・完全に魚に変身したとして、元に戻ることってできるのでしょうか。
結論:効率が悪そう。
②空気を持って行く(ヒトが水中で活動するにはどのくらいの量の空気が必要?)
お次は、シンプルに頭に空気の泡をかぶって潜るという方法。エラ呼吸とは違って、何をすれば良いか分かりやすいのが良いですね。ただ空気を持っていくだけです。
こんな感じでしょうか。
はいそこ、テキトーとか言わない。カスティーの編集技術なんてこんなものです。
考えてみれば、現世の生き物の中にも同じ作戦を使っている生き物たちがいます。
例えばゲンゴロウは羽の下に空気を背負って潜ります。ミズグモという蜘蛛の仲間は糸を使って空気を溜めた巣を作ります。そして、無脊椎動物だけではなく…ウォーターアノール(学名 Anolis aquaticus)というトカゲの仲間、爬虫類も空気の泡を使って水中で呼吸しています。
そして、現世で言うところのダイビング・・・ダイバーが背負っているものが正にそれですよね。
シンプルゆえに隙が無い作戦といえるかもしれません。唯一、気になるポイントとしては・・・、
空気ってどのくらい持っていけば良いのでしょうか。
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〜解説(読み飛ばしても良いよ)〜
餅は餅屋ということでダイビング用語を調べてみると、SACという1分間の水面での空気消費量という目安となる数字が出てきました。平均的なSACが男性で13L/min〜16L/min、女性で11L/min〜14L/min。無駄な動きが多い(上手くない)方がSACの値が大きくなるとのことなので、多めの16L/minとして1時間で960L。ほぼ1000L。お風呂で言うと5杯分くらい。とんでもない量です。
そこで、現世のダイバーがどうしているかといえば・・・空気を圧縮して水中に持ち込んでいます。それが、ダイバーが背負っている「タンク」です。ちなみに「酸素ボンベ」という言葉を聞きますが、タンクに入っているのは空気です。調べてみると、平均的なタンクの容量が10L。タンクに入っている空気は200気圧で圧縮しているとのことで・・・。持ち込んでいる空気の量は・・・なんと2000L。2Lのペットボトル1000本が5本になったと考えると、すごいですね。
当然、容器にかかる圧力は相当のもので日本国内ではスチール製のタンクが使われています。事故事例を見てみると、劣化したタンクが破裂して船底を破壊した・・・等の命に関わる滅茶苦茶怖い文章が並んでいます。
〜解説終わり〜
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理屈上は1000L。ダイビングで実際に使われているタンクを見てみると、2000Lくらいの空気を持って行きたいところですね。しかし、そのまま2000L持っていくわけにはいかないので圧縮して持っていく必要があります。また、圧縮したまま吸ったら大変なことになるので水中で吸えるように調整する必要もあります。
つまり・・・。
「水中に空気を持ち込んで呼吸をする」ためには、
・2000Lの空気を持ち運べる大きさに安全に圧縮する
・水中で空気を元に戻す
これらの課題をクリアする必要があります。何をするのかが分かりやすく、また、現世に存在する方法というのは強いですね。
結論:なんとなく、できそう。でも怖い。
③空気を作り出す(水の電気分解)
今までは、そこにある空気・・・というより酸素を利用する方法を考えてきました。お次は、それとは別で無から有を生み出す算段を立てようと思います。
とはいっても、本当に無から有を生み出すわけではありません。②では大量の空気を持って行くことを考えましたが、どうして大量に持っていかなければいけないのかといえば・・・それは呼吸によって空気が使えなくなる。空気中の酸素が減るからです。そして、水にはほとんど酸素は溶けていませんが、そもそも水はH2O・・・酸素原子が含まれているんです。
水の酸素原子から酸素(気体)を作ることができれば。ノーチラス号(フィクションの方)の潜水服のように、少ない空気で呼吸を続けることができます。
一気に話がSFになってきました。最高です。
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〜解説(読み飛ばしても良いよ)〜
水(H2O)から酸素(O2)を作り出す。中学の理科でやる「水の電気分解」ですね。2H2O→2H2+O2というやつです。水の電気分解を正確に思い出すと、水に水酸化ナトリウムを溶かしてから電気を流しました。純粋な水(純水)は電気を通さないからです。
この「電気を通すようになる」際に何が起こっているのかというと、水酸化ナトリウムが水に溶けることで電離してNaOH→Naイオン(陽イオン)+OHイオン(陰イオン)に。水も一部が電離してH2O→Hイオン(陽イオン)+OHイオン(陰イオン)になっています。
そこに電気を流すと、陰極ではHイオンが電子を受け取って水素が発生。陽極ではOHイオンが電子を渡して水と酸素が発生します。お目当ての酸素ですね。
これを海水でやった場合、まず海水は純水ではないので電気は流れます。そして陰極では水素が、陽極では塩素が発生します。なんでだよ。ちなみに、塩素のガスは滅茶苦茶に有毒です。実験室のように全てが水酸化ナトリウム水溶液であれば良いのですが、海水には様々なものが溶け込んでいます。そのうちのClイオンの方がOHイオンよりも先に反応してしまうのです。対策としては、海水をアルカリ性にする、陽極でClイオンを取り除く等の方法があるそうです。
なお、現世での電気分解酸素供給の実例として、以下のものがあります。
・国際宇宙ステーション:「エレクトロン」という装置で、実際に水を電気分解して酸素を供給することができるそうです。ちなみにその水は除湿で出た水だとか。凄い。
・原子力潜水艦:海水から真水を作り、電気分解をして酸素を供給することができるそうです。Clイオンを取り除くより、やり易いかもしれません。
〜解説終わり〜
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水の電気分解によって酸素を手に入れることは可能です。・・・正確にいえば「水酸化ナトリウム水溶液」の電気分解です。
④水から酸素を取り出す(①と③を読んでください)
ここまで読んでくださった皆さんなら分かりますね。溶けている酸素では少なく、電気分解としたら③と同じです。
結論:次いきましょう。
⑤気合いで素潜り(どうして息を止めることができないの?)
最終手段。息を止めて気合いで潜りましょう。
・・・。
まぁ、待ってください。「それができれば苦労は無いだろ」と思うのは分かります。分かりますが、ちょっと話を聞いてください。
大体がおかしいと思うのですが、どうして息は長時間止めることができないのでしょうか。
例えば、環境にもよりますが水だったら3日ほど。水以外の食料は2〜3週間ほど口にしなくてもギリギリ死なないと言います。そこまででは無いにしても、丸一日・・・24時間ご飯を食べなくても人間は死にません。
つまり、ご飯から摂っている栄養の補給が24時間途絶えたところで、人間は体内の備蓄で生命維持ができるのです。
にも関わらず、呼吸は30秒も止めたら苦しくなります。
ギネス世界記録では水中での息止めの最長時間は24分3秒とのこと。とても凄いことだと思いますが・・・、他に必要になる水や食事に置き換えて考えると。「30分もご飯を食べないなんて死んじゃう!」・・・。どんな食いしん坊キャラですか。
なぜ呼吸だけ、こんなにも「溜める」ことができないのでしょう。
・・・、ヒト以外ではどうでしょうか。
サメ
サメの一種であるアカシュモクザメは、水深800mという深海にまで潜ることが確認されています。しかし、アカシュモクザメは「変温動物」。体温は周囲の水温によって変わるので、冷たい水の中では動けなくなってしまいます。では、寒い深海でどのように活動するのかというと・・・、なんと体温が下がっていません。アカシュモクザメは呼吸を止めることで冷たい水が体内に入らないようにしているのです。
深海に潜っている時間は30分ほど・・・潜って15分で体温が下がるようなので少なくとも15分は息を止めているようです。
イモリ
両生類といえば、生まれた時はエラ呼吸。大きくなると肺呼吸。ということで、アカハライモリも息する時は水面から出るんでしょう?と思いますが・・・、実際に観察していると全然出ません。というのも、大きくなったアカハライモリの呼吸は正確には「皮膚呼吸と肺呼吸」。皮膚や粘膜でガス交換(①読んで)ができるのです。水温が低い・・・水の中に十分に酸素があって安静にしていれば、アカハライモリは皮膚呼吸のみで大丈夫だったりします。カエルとかは肺呼吸側がメインらしいですね。
はい。息止めていませんでした。ですが、併用すると言うのは良い考えかもしれません。
ウミガメ
ウミガメは肺呼吸です。つまり、水に潜っている間は息を止めています。どのくらいの時間、水に潜ることができるかというと・・・アカウミガメが最長で400分以上。脅威の6時間越えです。ちなみに、深さで言うとオサガメが水深1250mまで潜るとのこと。
アカウミガメは肺に空気を溜めることで長時間の潜水を可能にしているそうです。
ペンギン
お次はペンギン。こちらも水の中を泳ぐことで有名な動物で、肺呼吸です。中でもコウテイペンギンは水深500mより深く潜り最長で27分以上潜ったことも確認されているそうです。・・・。ペンギンも深海に行くんですね。時間ではヒトの潜水時間と同じくらいに見えますが・・・、コウテイペンギンは泳いでいることを考えると相当なものです。
コウテイペンギンは気嚢に空気を溜めることができ、また、体の使わない箇所の代謝を下げることで酸素の消費を抑えることもできるそうです。それ良いですね・・・。
鳥(恐竜)
水の中では無いですが、ペンギン以外の鳥も肺呼吸で・・・そして空気が薄い「空」を飛ぶものが多くいます。当然、空を飛ぶという運動には多くの酸素が必要です。では、その鳥がどのように酸素を確保しているのかと言うと・・・「気嚢」があることによる無駄が少ない呼吸で確保しています。
①でも少し触れましたが、人間の肺は実はかなり効率が悪いです。呼吸の出入りのルートが完全に同じなので、口から吸い込んだ酸素が多い空気(青色)と血液中の二酸化炭素を受け取った空気(赤色)が混ざります。そのため、空気の物理的な貯蔵庫になる「肺」にあるのは青色と赤色が混ざった空気になります。
対して、大体の鳥の仲間は体の中に9つの気嚢があります。吸い込んだ空気はまず後気嚢に送られます(青色)。さらに吸い込まれると押されて肺に移動します(青色)。肺の空気は血液中の二酸化炭素を受け取って出ていきます(赤色)。後気嚢は、吸い込んだ酸素が多い空気だけの貯蔵庫になります。
・・・実際にはもうちょっと細かいですが許してください。
簡単に言うと、一方通行にすれば、新しい空気と古い空気が混ざらないので効率が良くなります。
ちなみに、太古の地球の覇者であった「恐竜」はこの気嚢を持っていたと考えられています。その時代に恐竜が大型になれたのは、この効率の良い呼吸システムがあったからなのかもしれません。
クジラ
哺乳類にも長時間潜水できるものがいます。ぶっちゃけ大本命・・・クジラです。なんとマッコウクジラは水深2250m。アカボウクジラは水深2992mという、ちょっと桁違いな深さにまで潜った記録があります。そして、諸説ありますがその潜水時間は60分・・・1時間を超えるそうです。・・・。アカウミガメのせいで凄さが薄れますが、めっちゃ凄いです。
クジラも肺呼吸です。では、どのようにして長時間潜水しているのかと言うと・・・筋肉に酸素を溜めることができるのです。また、「溜める」か。と思うかもしれませんが、ここまでの生き物では「肺や気嚢などで空気を溜めておく」話をしてきました。肺から取り込んだ酸素は血中のヘモグロビンに結合して体中に運ばれます。身体中に運ばれた後は筋肉中のミオグロビンに結合します。・・・見方を変えれば、この時、酸素はヘモグロビンやミオグロビンに溜められていることになります。深海に潜るクジラは、このミオグロビンに溜めておける量が多いのです。
こうして見ると・・・、24時間息を止めることができる脊椎動物はいないようですね。それだけ酸素を体内に持たせる・・・息を止めることは難しいのかもしれません。
現世の生き物たちは、息止めを・・・、
・他の呼吸法と併用する
・肺や気嚢に入れて空気を持ち込む
・代謝を下げて酸素の消費量を下げる
・ミオグロビンに酸素を溜め込む
等の方法で、実施していました。
①と同じく、体を大きく変身させる必要があり、効率がいいのか悪いのか分かりませんが・・・。例えば。
イモリのように水中でガス交換ができる器官を作り・・・。
鳥が持つ気嚢のように肺を一方通行にする器官と溜める場所を作り・・・。
ペンギンのように水中で使わない場所の代謝を下げ・・・。
クジラのようにミオグロビンでの酸素貯蔵を増やすことで。
潜水時間を伸ばすことができるかもしれません。
結論:生き物ってすごい。
●まとめ
今回は様々な潜水方法を考えてみました。
分かり易い方法としては現世のヒトも使っている②空気を持ち込む、組み合わせることで良い感じになりそうなのは①エラ呼吸と⑤呼吸を止める、補助的に使えそうなのが③電気分解・・・といった所でしょうか。
試しにやってみましょう。
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〜異世界でやってみる(むしろ読み飛ばしましょう)〜
「こ、これって。本当に、本当に大丈夫なんだろうね?カスティー。」
オスカニニーがそう問いかけてくるのは、これで何度目だろうか。不安そう・・・というよりも疑念たっぷりといった視線がこちらに飛んでくる。
「大丈夫。な、筈。・・・きっと、たぶん。」
対する私の返事も徐々に先細りになっていく。オスカニニーと私は、海岸に並ぶ岩の上に立って底の見えないーーー岸なのであまり深くは無いと信じたいーーー波の間を睨んでいた。揃って濡れても体の動きを妨げなさそうな薄い服を纏い、剣ではなく穂先の短い槍・・・銛を下げている。
不安を隠しきれない私たち2人とは裏腹に、明るい声がかけられた。
「大丈夫だって〜!カスティーの石板と、私の魔法を信じなさいってば!〜っ!」
いつも以上に元気なチャイネンスはそう言って・・・、何故か私やオスカニニーと視線が合いそうになると視線を外す。よく見ると、そむけた顔の下の方が震えていた。・・・笑っているな。
波間に映る、我々(私とオスカニニー)の姿は・・・顎の後ろに数本のスリットが開き、胸の下・・・お腹の辺りが一周不自然に盛り上がっていた。全身のシルエットで言うと、縦にしたレモンのような感じだろうか。
分かっている。かなり不恰好だ。
「これが、カスティーの石板の知識と、ふふっ!私の叡智を掛け合わせた。潜水魔法よ!」
首に空いているスリットは水の中でもサンソとやらを取り込むための穴で、そのサンソを膨れ上がった腹の下の肉の層に貯めるらしい。体全体の形は水の中を効率よく進むためにこうなったのだとか。
なお、変身は終わっているのだが・・・そのサンソを十分に取り込むために、カスティー達は潜らずに岩場に立たされて深呼吸をおこなっていた。
「そ、それにしたって・・・。パワー低下の魔法は本当に必要だったのかい?今から泳ぐっていうのに。」
笑われていることが面白く無いのだろう、そう言いながらオスカニニーはチャイネンスをジロリと睨みつける。すると、彼女は笑みを消して・・・、視線を正面から受け止めた。
「必要よ。今から潜った後、殆どはあいつを探す時間になる。どれだけ時間がかかるか分からない。無駄な部分に“火の素”を割く余裕なんてないの。水中での戦いが長引いたらどっちみち負けよ。」
それよりも。とオスカニニーの目を睨み返しながら彼女の言葉は続いた。
「私の魔法にケチをつけるなら。兄さんこそ、水から“火の素”を取り出す練習は上手くいったのよね?ええ。別にできなくても良いけれど。この前みたいに毒ガスを作るのはやめてよね。」
「あ、当たり前だろ。そっちこそ、“火の素”は作ったって空気に混ぜないと意味無いんだ。自分は潜らないんだから、サボって僕らの泡を消すんじゃ無いぞ。」
「心配しなくてもカスティーの分はしっかり維持するわよ。」
「なんだと!」
・・・また、始まった。なんだってこの兄妹はすぐに言い合いを始めるのだろうか。身内だからこその甘え合いと思えば、良いことなのかもしれないが。
最後まで付き合っていると日が暮れそうなので、2人の間に体を滑りこませて無理やり会話を中断させる。
「オスカー。あまり叫ぶと、せっかく吸ったサンソが勿体無いよ。・・・じゃあチャイ。支援よろしくね。」
「わ、わかったよ。チャイ・・・覚えてろ。」
「いってらっしゃい。カスティー、兄さん・・・帰りを待ってるわ。」
不服そうなオスカニニーを引っ張って、共に海へと飛び込む。口に入った水が喉の穴から外に抜ける感覚は何度やっても慣れそうに無かった。
海に沈む私たちの後を追うようにして、空気の塊・・・巨大な泡が沈んでくる。その光景はとても不思議でいて、どこか楽しげだが。あの泡はチャイネンスが風を集めて凝縮したボールのようなものなのだ。下手に触って泡が破れれば、何100倍にも膨れ上がってカスティー達を吹き飛ばすだろう。
(もし、サンソの補給で使わなかったら。あの泡をぶち当ててやろう。)
この泡魔法が完成するまでに幾度となく生まれた惨劇を思い出し。ここら一帯の船を襲い、討伐対象となった有名なモンスター・・・クラーケンであっても、直撃すればひとたまりもないと確信する。
(さて。・・・クラーケンって美味しいのかな。)
エール・バビロニアン・タブレットに、クラーケンの味は載っているのだろうか。
〜茶番終わり〜
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・
もしかしたら、異世界でそんなことがあるかもしれません。いつか食べてみたいなダイオウイカ。
ということで、現世では・・・少しは泳ぎの練習をしようかと思います。
それでは皆様、良い異世界ライフをお過ごしください。
アカボウクジラは確認された中で3時間42分も潜っていたことがあるとか。すげぇ。(お別れの言葉)
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